明けましておめでとうございます。
コンサルタントの大河内です。
唐突に私事で恐縮ですが、昨年末、人生で初めて競馬に行って参りました。
有馬記念@中山競馬場です。
今回は、そこで考えたことを記事にしてみたいと思います。

2015年に回復の兆しを見せた競馬市場
本題に入る前に、簡単に基本情報をさらっておきます。
売上規模を長い目で見た競馬のピークは90年後半で、この際のJRAの売上規模は4兆円超でした。
その後、余暇の多様化・賭博イメージの低迷・リーマンショックをはじめとする景気低迷とそれに伴う若者の賭博離れなどにより、売り上げ規模は大きく右肩下がり。現状では2.5兆円規模まで落ち込み、ここ数年は歯止めがかかっていない状況です。
しかし、今回私が行った2015年有馬記念を見ると、ここ6年で入場者数・売上共に最多。
少し視点を広げて他の国内GIレースに目を移しても、入場者数・売上は前年比でほとんどのレースにおいて大きなプラス。これに伴ってJRAの売上も前年比2.8%増加という結果でした。
まとめると、長期的には右肩下がりですが、昨年に限れば明らかな”回復”の兆し。
一体何があったのでしょう?
競馬のイメージを変えるメディア戦略
結論から言ってしまうと、
メディアを利用した「競馬」というものに対してのイメージ戦略が功を奏した、というだけのことです。
これまでの競馬のイメージは”くたびれたおじさんたちが昼間から酒飲みながらやるような退廃的なもの”みたいな感じでしょうか。(少し言いすぎましたでしょうか笑)
ともかく、このイメージを一転すべくJRAが意図を持って本腰を入れたと思われます。
具体的には、
JRAとしてのTVCMでは有村架純・瑛太といった流行りの若者が友人らと楽しんでいる様子を流し、気軽に友人と楽しめる新しい娯楽のイメージを提供しています。
これだけに留まらず、テレビ番組『うまずきっ』ではAKBの小嶋陽菜、乃木坂の白石麻衣らを起用。
”賭博”としての一面というよりは、馬のかっこよさや競馬エピソードの面白さ、予想を当てる(「お金を稼ぐ」ではない)ゲーム性にフォーカスし、競馬の新たな楽しい一面を開拓しています。
このような、これまでのイメージを新しい切り口で裏返す取り組みによって、着実に若者の間で新しい娯楽としてのイメージや興味喚起がなされつつあるのが現状でしょう。
こうなると日常的に競馬に関わる訳ではなくとも、GIレースのようなお祭り的レースだけでも、「一回くらい実際に行ってみようか」となる訳です。
実際に昨年末行った感想として、意外と若者や女性が多いなぁという印象でした。
課題は「イメージ」と「実態」のギャップを解消すること
ただしこのような話は、「野球におけるカープ女子」などにも見られるように言ってしまえばよくある話です。
こと競馬に限った場合、競馬の「イメージ」と「実態」のという構図の中で、ここからが勝負であると考えています。
というのも、現状ではメディア戦略で消費者の中にある競馬のイメージを振り上げているのみで、実態、つまり実際の競馬場の環境や、レース観戦の仕組みそのものについてはなんら改善がなされていない状況なわけです。
ちなみに、自分としても行った感想としては「しばらくは行かなくていいかな。。。誘われれば行くかな。。。」です。
具体的には、消費者はCMやテレビ番組で見たような、楽しい娯楽を想像して競馬場に向かうわけですが、以下のような “つらさ”が襲ってきます。笑。
・場内に座るところがない(はやくから来てるおじさんたちが椅子を全て占拠してます)
・床がひたすら汚い(馬券・投票用紙がこれでもかと散乱してます)
・競馬場内のテナントが魅力的でない(よくわからない飲食店等が多いです)
・従って、レースとレースの間暇です
といったところでしょうか。
有馬記念という年に一度のお祭りであることを差し引いても上記のような“つらさ”はなかなかのものでした。(もちろん、「馬の躍動感がかっこ良い」「当たるかも、というワクワク感」「観戦時の人のエネルギー」などよい点はたくさんありました)
訴求しているイメージと実態が乖離していると、そこに消費者はある種の”残念感”を覚えます。
結果としてリピートがされず、長期的に客足は必ず遠のきます。
挙げた実態はほんの一例ですが、訴求しているイメージに追いつき・追い越せるように改善していくことが必要です。
ただし、この際注意しなくてはいけないことは、新しい消費者を意識しすぎるあまり、メインの売上ボリュームゾーンであるおじさんたち(冒頭のイメージで登場した彼らです)、から嫌われるような改善をしてはいけない、ということです。
例えば、場内での飲酒を固く禁止にするなど。
これらをしてしまうと、これまでの固定客を逃すこととなり本末転倒です。
「新しいイメージに実態を追いつかせる」
「現状の固定客の満足を落とさない」
この二つの絶妙なさじ加減が求められる訳ですね。
自分個人としては雑感ですが、テナントの充実などを強化し、複合娯楽施設としての色を強めていけばよいのではないかと感じました。
売上としては現在、底を打ったところから少し回復しかけている、というところです。
もう少し伸ばすところまではイメージ戦略でいけるところであり、いかなくてはならないところだと肌感覚では感じます。
しかしそれだけではただの延命措置。
おそらく売上の上昇よりもメディア出稿費が高く付いてしまい、いずれ耐えきれなくなるかと思います。
いかに実態を魅力的にし、業績の回復を勝ち取るか。
やりようによっては見事なV字回復の可能性もゼロではないように思います。
今後の動向に要注目です!!